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Lettre De Marseille   No. 2
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NOVEMBER 1999
先日、港の脇ジョリエット広場のレストラン"Au Dock de Suez"で、Jacques とJean-Claudeと夕食をとりました。
ジャック?、、、ジャンクロード?、、、そいつはいったい誰かって?
ジャック、というのはフランス共和国大統領Jacques CHIRAC氏、 ジャンクロード、はマルセイユ市長のJean-Claude GAUDIN氏。 さも馴れ馴れしく名前を呼び捨てにしたのはホンの冗談ですが、私が夕食の招待を受けたというのはホントの話しです!
港町マルセイユは、かつてギリシァが地中海に覇を競っていた紀元前600年の時代にマッサリアという名前でギリシァの衛星都市として始まったという考古学的記録があり、今年は何と2600年目。そこでこの6月には、市の玄関口である港と目抜き通りを会場に市民数千人による大々的な2600年記念パレードが催され、はばかりながら私も市の依頼でパレードの一部を指導し参加いたしました。また、9月にBAMBOO ORCHESTRAが雅楽三管を招聘した創作コンサートも、この2600年祭のラベルが張られた記念事業のひとつだったのです。ゴダン市長は、特にパレード構成に関係した80数名の労をねぎらう意味で、シラク大統領を招いた晩餐会を催したというわけです。
マルセイユ在住の一外国人音楽家が、仮にもフランス共和国大統領と食事をし話しをする機会を得たことは、実に運が良く光栄なことに違いありません。しかし、そうは言っても私のこれまでのフランス滞在の印象からすれば、さほど特筆すべき事でも無いかなという気もいたします。というのは、ひとつはフランスが他国に比してもより文化に重きを置いているという意味に置いて、もうひとつは、特に人種の入り交じったマルセイユは、各出身の文化を尊重し合い共存することがテーマで、---これはゴダン市長が2600年祭の意義として事あるごとに喧伝している点でもありますが、私がマルセイユ在住の日本人をたまたま代表して招待されたとも言えるのです。

この国では、"芸術家、それも外国人の一芸術家にも市民権が与えられている!"というのが、実際私がフランスに住んだ素直な印象です。
芸術家にも市民権が与えられている、つまり芸術家も市民の一員である、、、とは、言ってみれば当たり前のことのようですが、行政が経済側面だけでなく文化、つまり教育、福祉、芸術などに同等の比重を置き、市民生活に欠かせない要素として取り組んでいる点は賞賛すべきことです。フランスが"文化国家"といわれる所以はそこであり、私が住んでみた生活実感としても確かなものです。
6年前にこんな事がありました。私が東京からマルセイユに移り住んだ当初は、南仏に大きな竹林があり、そこの竹を使って楽器を作ればここでも仕事を続けられるという唯一の手がかりがあっただけで、何らツテが在ったわけではありません。全く暗中模索、どの様にして仕事を始めたものやら判らぬまま、時間だけは瞬く間に過ぎてしまいました。しかしいつまでも手を拱いているわけにも行かず、数ヶ月後竹林で竹を購入し知り合いのガレージを借りて小さな竹マリンバを作り、それを自宅のアパルトマンに持ち帰り練習をしていました。
ある日、上の階の初老の男性が階段ですれ違いざま、私に話しかけてきました。うっ、しまった!これは音を聞きつけられ、苦情を言われるに違いないと覚悟しました。 「貴方は音楽家ですか?、、、変わった面白い音がしていますね。仕事はうまく行きそうですか?、、、タイヘンでしょう。、、、私の友人に新聞記者がいますから、記事を書いて貰えば何かのお役に立つかと思いますが、、、」

TEMOIN - Les bambous melodieux de Makoto数日後、件の新聞記者が私を訪れ、南仏大手地方紙のいわゆる「人」の欄に竹マリンバを叩いている私の写真が掲載されました。それは「Makoto YABUKIは音楽家、竹とトランクを手にマルセイユにやって来た。果たしてマルセイユの音楽シ−ンは豊かになるか、、、」という見出しでした。
それがここに来て6ケ月目の事。それから少しずつ「マルセイユで日本人が竹の音楽をやっている」と知れ渡り、市が管理するFriche Belle de Maiのアトリエの提供を受けBAMBOO ORCHESTRA de Marseilleを旗揚げするまで、実にホンの1年半足らずの事でした。

今では、BAMBOO ORCHESTRAは創作活動に対して文化省、地方議会、市からの助成を受け、また音楽教育活動は文部省、文化省、県議会の助成で運営しています。この国では文化行政というものが確立されており、例えば音楽という芸術活動が市民の生活、或いは子供達の教育に必要なものと認識され、良い物に対してはそこに税金を使い支援することに全く躊躇はありません。また、私に新聞記者を紹介してくれた隣人のように、ごく一般の人々も芸術に関心をもち、庶民ひとりひとりのレベルから行政のレベルまで、芸術は皆で育むものだという気運があります。そして物質的な面ばかりでなく、豊かな文化に囲まれた生活こそが豊かな市民生活だという考えが浸透しています。

ところで、その夜のディナーのメインは案の定マルセイユ名物ブイヤベースでした。シラク氏が大の日本贔屓で、特に相撲には目がないと言うのを聞いていましたから、わたしが話しを振ると、待ってましたとばかり目を輝かせ「知ってるかい、今場所は曙は怪我をしているし、貴乃花も不調で、今日は六日目、武蔵丸は五勝一敗だけど、優勝は武蔵丸に間違いないね!」私はその時日本で相撲の場所中だという事も知らなかったので、「ホー、日本人の私よりも遙かにご存知ですね」と言うと、「嫌々それ程でもないよ、、、」と照れながらも、その夜唯一だった日本人の私をつかまえて延々相撲談義をしてくれました。
勿論、私はBAMBOO ORCHESTRAの宣伝もしておきました。彼は「ふーむ、それは面白そうだ、是非聴いてみたいね」と大いに興味を示していました。まあ政治家の言うことですから実際何処までが本心か判りませんが、、、ただ彼が相撲を語るときの目、これは少なくとも本気でした。

Makoto YABUKI

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