数日後、件の新聞記者が私を訪れ、南仏大手地方紙のいわゆる「人」の欄に竹マリンバを叩いている私の写真が掲載されました。それは「Makoto YABUKIは音楽家、竹とトランクを手にマルセイユにやって来た。果たしてマルセイユの音楽シ−ンは豊かになるか、、、」という見出しでした。
それがここに来て6ケ月目の事。それから少しずつ「マルセイユで日本人が竹の音楽をやっている」と知れ渡り、市が管理するFriche Belle de Maiのアトリエの提供を受けBAMBOO ORCHESTRA de Marseilleを旗揚げするまで、実にホンの1年半足らずの事でした。
今では、BAMBOO ORCHESTRAは創作活動に対して文化省、地方議会、市からの助成を受け、また音楽教育活動は文部省、文化省、県議会の助成で運営しています。この国では文化行政というものが確立されており、例えば音楽という芸術活動が市民の生活、或いは子供達の教育に必要なものと認識され、良い物に対してはそこに税金を使い支援することに全く躊躇はありません。また、私に新聞記者を紹介してくれた隣人のように、ごく一般の人々も芸術に関心をもち、庶民ひとりひとりのレベルから行政のレベルまで、芸術は皆で育むものだという気運があります。そして物質的な面ばかりでなく、豊かな文化に囲まれた生活こそが豊かな市民生活だという考えが浸透しています。
ところで、その夜のディナーのメインは案の定マルセイユ名物ブイヤベースでした。シラク氏が大の日本贔屓で、特に相撲には目がないと言うのを聞いていましたから、わたしが話しを振ると、待ってましたとばかり目を輝かせ「知ってるかい、今場所は曙は怪我をしているし、貴乃花も不調で、今日は六日目、武蔵丸は五勝一敗だけど、優勝は武蔵丸に間違いないね!」私はその時日本で相撲の場所中だという事も知らなかったので、「ホー、日本人の私よりも遙かにご存知ですね」と言うと、「嫌々それ程でもないよ、、、」と照れながらも、その夜唯一だった日本人の私をつかまえて延々相撲談義をしてくれました。
勿論、私はBAMBOO ORCHESTRAの宣伝もしておきました。彼は「ふーむ、それは面白そうだ、是非聴いてみたいね」と大いに興味を示していました。まあ政治家の言うことですから実際何処までが本心か判りませんが、、、ただ彼が相撲を語るときの目、これは少なくとも本気でした。 Makoto YABUKI |