《Bamboo Orchestra創設15年》
Bamboo Orchestraが誕生して早くも15年が経過した。
この15年の間、日本とフランス両国で二つのグループ、Bamboo Orchestra Japan、Bamboo Orchestra de Marseilleが演奏活動を展開してきた。そして、両国内だけでなく海外公演を通じてU.S.A、中国、コスタリカ、イタリア、チュニジア等の国々のコンサート会場でBamboo Orchestraのライブ演奏を聴き、竹楽器アンサンブルの新しい可能性を体感した聴衆は多数にのぼる。また、インターネットを通じて世界中の人々が日々Bamboo Orchestraの日仏サイト、Myspaceサイト、YoutubeヴィデオサイトにアクセスしBamboo Orchestraの音楽を聴いている。
一方、日仏Bamboo Orchestraのイニシャティブのもと、あるいはBamboo Orchestraの音楽に触発されて、プロ、アマを問わず様々な竹音楽演奏グループがここ10数年の間に生まれた。そして、Bamboo Orchestraが実施するワークショップやアトリエ活動に参加した多くの子供や大人達が、実際に竹楽器作りや竹楽器演奏を体験しただろう。
それまで竹楽器合奏といえば、 クロンプットやチャルンが響くヴェトナムの竹楽器合奏団、インドネシアのアンクルン合奏、踊りを伴うバリ島のジョゲブンブン、南米ペルーのケーナとサンポーニャが奏でるインディオ音楽、、、などを人々は思い浮かべただろう。それらの民族色豊かな独特な旋律や音色は、心温まる魅力的な音楽ではあるが、決してアクチュアルな現代の創造的音楽とは言い難かった。
Bamboo Orchestraという名称は、「Bamboo」つまり竹、と 「Orchestra」合奏グループという一般名詞を繋げたものに過ぎない。だから、上記の様な伝統的竹楽器演奏も含め竹楽器合奏すべてをBamboo Orchestraと称しても差し支えはない。
しかし私が唱える「Bamboo Orchestra」、そして私たちがこの15年間続けてきた活動は伝統的竹楽器アンサンブルの演奏活動とは些か異なっている。
《Bamboo Orchestraの仕事》
アジア諸国や南米に古くから存在していた伝統的竹楽器、合奏の形態や音楽性から学びながらも、それらとは異なる現代の生きた音楽を創造する事をBamboo Orchestraは目指してきた。新たに竹楽器を創作し、演奏方法を開発し、合奏形態を模索し、、、「エキゾチックな竹音楽」というレヴェルに留まるのではなく、 国境や民族性を越えたユニヴァーサルな創作竹楽器によるアンサンブルの可能性を追求し、展開したのである。
コンピューターを使用すれば誰もが簡単に作曲でき、サンプリング技術によりどんな音でもコンピューターに取り込み音楽に構成できてしまうという、、、まるでテクノロジーが我々の芸術的創作意欲をも先取りしてしまった感のある、この21世紀初頭の時代に、何気ないありふれた「竹」という自然の素材から今まで聴いた事のない新しい音楽が生み出され、そして音楽を巡る新しい人間関係が創出されたのだ。
Bamboo Orchestraにとっては、ジャズ、ロック、クラシック、現代音楽、レゲエ、テクノ、、、という様な既存の音楽ジャンルの脇に、又一つ「竹音楽」という新しいジャンルを付け加えるのが仕事ではない。Bamboo Orchestraの音楽活動は、「音楽」というカテゴリーに拘泥し狭い芸術領域でしのぎを削り、音楽商品として市場で競争するのが目的ではなく、音楽を人間の営為としての本来の姿、 つまり人間の「楽しみ」(divertissement)、「知性」(intelligence)、「文化」(culture)、「精神性」(spiritualite)、「コミュニケーションの道具」(outil de comunication)という地平で捉え直し、「竹」という植物を通じた自然と人間の共存、世界言語「音楽」を通じて国境や民族を超えた人類共存の可能性を模索し提起するのが目的である。
Bamboo Orchestra活動とはーーー竹という素材と向き合い、その自然の恵みから何を引き出し何を共有できるのかを、音楽という表現行為を通じて模索する作業の総体とも言える。
具体的な話しをすれば、 竹林から竹を切り出し、時間をかけてゆっくり乾燥させる。それぞれの楽器に相応しい竹を選び、切ったり削ったり穴を空けたりして竹が響く様に加工する、つまり楽器に仕上げるのだ。そして、出来上がった竹楽器それぞれの音色や響きそのものから音楽を構想するのである。
「はたして竹は何を言いたいのだろうか?」と、竹の心根に思いを寄せ、竹の音色に素直に耳を澄ます時、音楽はそこから自然に立ち上ってくる。
さて、その音楽を誰と共有するか?
《エコロジー》
ご存知の様に、竹は草の一種で成長が早く、竹材の有効利用は環境問題解決の糸口と世界中が期待している。インドでは竹の繊維、インドネシアでは竹紙の生産、中国では竹の合板の製作が加速している。勿論今の段階では、これら全ての竹利用が即環境保護に直結しているとは言い難い。しかし、世界全体は一定の方向に足並みを揃えようと動きつつある。それぞれが好き勝手に利潤追求をしていては、人類、自然、そしてこの地球は死滅してしまうという事に誰もが気づいた。Bamboo Orchestraの音楽活動は、エコロジー、地球温暖化ガス排出規制の世界的な動きともあきらかに連動しているのだ。
例えば、農家が野菜を栽培し販売するプロセスを想像してみよう。
心ある農夫は、健康な大地に野菜の種を植える。幾月か経過して収穫した有機野菜を、どのような流通方法で消費者に届けたらいいだろうか?と思案する。
一方別の農家は、人工肥料や農薬や保存添加物や着色剤やワックスを存分に使用して、美しく均等で痛みにくく長持ちする野菜の提供を試みる。 一般消費者は曲がった人参よりまっすぐなもの、泥の付いていないジャガイモ、艶のある真っ赤なトマトを望んでいるのだから、その方が野菜が売れるのだからそれに越した事は無い。 販売量が増えれば利潤は増加し、それまでの単なる一農家から今や野菜工場の社長だ!
、、、音楽も全く同じプロセスを辿った。音楽を消費するのは主に都市生活者、彼等の気分やストレスにあった音楽を作る。消費者は移り気で耳新しさを求めているから、コンピューターとサンプリングと電気楽器で音楽を加工する。しかしあまりにも人工的すぎると消費者にそっぽを向かれる恐れがあるので、エスニックなスパイスも適宜少々振りかけておく。コンプレッサーを最大限に掛け耳に強烈なインパクトを与える様にCDを加工する。
スーパーの野菜売り場で色を鮮やかに見せる為に特殊な照明を用いる様に、音を聞いたとたんに新鮮さを覚える様に工夫し、陳列棚でもなるべく目立つ様に装丁を工夫する。
さて、こんな消費経済優先社会の中で、私たち「Bamboo Orchestra」に集う心ある音楽人たちはどのような音楽をつくり、また、どんな人々と音楽を共有したらいいのだろうか?
《アトリエ活動の展開》
私は、渡仏以来14年間Bamboo Orchestra活動を続けてきた。Bamboo Orchestraがヨーロッパで受け入れられ聴衆の惜しみない拍手で迎えられ、アトリエ活動に多くの人々が参集しているのは、Bamboo Orchestraの音楽が既存のヨーロッパ・クラシック音楽やポピュラー音楽に迎合しおもねっているからではない。逆にBamboo Orchestraが提起する、今までのヨーロッパ音楽には無かった発想、「音楽を人間の営為として総合的に捉える」視点、そしてその具体的な活動が歓迎されているのである。
私は、Bamboo Orchestra創設15年の節目に、竹音楽がどのような人々と出会いどのように生かされてきたか、、、つまりアトリエ活動がどのように展開してきたか、という事を纏めておこうと思う。それは大げさに言えば「Bamboo Orchestra音楽メソッド」と言っても差し支えないのだが、「メソッド」(methode)と名付けるのは些かためらう。それは、20世紀初頭のヨーロッパで、ジャック・ダルクローズ、カール・オルフ等が提唱した音楽メソッド、音楽運動が時を経るに従い硬直し融通性を欠いてしまったという残念な歴史があるからだ。
音楽活動は生きている。音楽を提供し指導する側と、参加し体験する人々とその場その場の新鮮な人間関係に依存している。それぞれの場所、人間関係は予想が利かず流動的だ。臨機応変に対応し、その都度最善の方法を模索しなくてはならない。
私がこれから提示するのは、私の経験の一つ一つの事例に過ぎない。しかしその個別の例からも何かしらを学ぶ事が出来、ヒントが得られると思うのである。
《竹製打楽器》
まずはじめに、アトリエ活動(ワークショップ、講座)で使用する楽器群について説明しておきましょう。
rchestraがコンサートで使用している竹楽器群の中には、篠笛やパンフルートや尺八、ケーナ、笙等の管楽器もあります。それらは、美しい旋律やハーモニーを奏でる為には不可欠です。しかし、管楽器を上手に操るには長期間の修練が必要。ですから、アトリエ活動ではもっぱら竹製打楽器群が活躍します。
“誰でも、叩けばすぐに音が出る”という打楽器のとっつきやすさは、管楽器や弦楽器には太刀打ちできない優位性です。 音楽経験の無い一般の人々、そして特別な音楽教育を受けていない子供たち 、つまり一般の小中高大学生が、音楽演奏を初めて体験するのにはまず打楽器が相応しい。 例えばジェンベの様な西アフリカの太鼓は、手で直に皮面を叩けば音が出るからとても優れている。勿論ジェンベとて秀でた演奏をする為には長年の訓練とリズム感と才能が必要だが、手で叩けば誰でもすぐに音が出せるというのは魅力的だ。フランスでは、多くの社会文化施設でジェンベを取り入れた音楽アトリエ活動が行なわれている。実際フランス国内にはアフリカ出身者もアフリカ移民の子弟も多く住んでいるから、音楽を通じて彼等が自らのアイデンティティを発見するという意味でも多いに重要な事である。
日本でもここ数十年「組太鼓」という和太鼓によるリズム合奏が普及し、小さな街でも太鼓のグループを見かける。この和太鼓合奏という形式も、誰もがすぐに参加できるという打楽器アンサンブルの優位性だ。それに、直接体にずしんと響く太鼓の音の体感的バイブレーションも魅力である。 同様に、竹打楽器合奏も誰でもすぐに参加でき、そして太鼓合奏よりもより音楽的に発展できるという優れたメリットもある。
アトリエ活動で使用する楽器群は、以下である。
1ディアトニック竹マリンバ
2スリッタム
3アンクルン
4マウイ
5ケチャ
6手マリンバ
7スタンプ
8太鼓
9竹ぼら、、、etc
<ディアトニック竹マリンバ>Take-marimba diatonique
クロマチック音階(英cromatique scale 、仏gamme chromatique : ピアノの様な二段鍵盤形式で、1オクターブ12半音構成という意味)の竹マリンバがアマチュアには取っ付きにくいとしたら、メロディーやハーモニーを伴う合奏を全て諦めてしまう必要があるのだろうか?音楽を得意としない一般の人は、皆、和太鼓やジェンベの様に音階のない楽器を叩いてリズムだけで満足していれば良いというのか?、、、いや、そんなはずはない。
クロマチック音階に設定された鍵盤楽器は確かに便利だ。しかしクロマチック音階でないと豊かな音楽が演奏できないわけではない。現在巷で聞こえている音楽の大半はいわゆるクロマチック音階で構想されているから、それらの曲想をそのままディアトニック音階(全音階:英diatonic scale、仏gamme diatonique)やペンタトニック音階(五音音階)の鍵盤楽器で演奏しようとしても些か無理がある。(弦楽器や管楽器はその点自在性が残されているのだが、、、)

バスマリンバ1
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多くの音楽は基本的にドレミファソラシ(7音)のディアトニック音階で成り立っている。ただ、色彩を変える為に転調したり、オシャレなハーモニーを挿入する為にはディアトニック音階以外の半音が必要になり、それに対応する為には鍵盤楽器が1オクターブ12半音で構成されている方が便利である。しかし、その優れた機能が返って一般の人が楽器に向かった時に拒否反応を起こしてしまう原因になっているのだとしたら、何の意味があるだろうか。私はディアトニック音階(1オクターブ7音だけ)の楽器を使うことによって、音楽を演奏し合奏する喜びを一般の人々が手軽に味わう事が出来るのだとしたら、そちらを優先する方が懸命だと断言しよう。ただ、ディアトニック音階の音楽世界はクロマチック音階とは別のシステム(否定的な言葉を使えば“限界”がある)なのだから、ディアトニック音階の楽器で出来る面白い音楽、曲想を同時に創造する気にならなければ、このシステムは面白く発展しない。既に作曲され巷に溢れている耳慣れた流行音楽をディアトニック音階の楽器に当てはめよう等とは考えない方が懸命だ。ディアトニック音階を生かして如何に音楽を作るか?と発想を転換する事から、未来は開けてくる。
アトリエ活動では、基本的に三種類のディアトニック竹マリンバで合奏を構成しています。
バス・竹マリンバ
アルト・竹マリンバ
ソプラノ・竹マリンバ

バスマリンバ2
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<バス・竹マリンバ>
(直径9cm〜11cmのモウソウ竹を使用)
音階は、ヘ音記号二間目のド音(C3)から1オクターブ
ド、レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、シの7音構成
あるいは、2音追加して、
ド、レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、シ、ド、レの9音構成
<アルト・竹マリンバ>
(直径6m〜8cmのモウソウ竹を使用)
中央ド(C4)の音から2オクターブ
ド、レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、シ
の14音構成

アルトマリンバ
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<ソプラノ・竹マリンバ>
(直径5cm〜7cmのモウソウ竹を使用)
ト音記号第二線のソの音(G4)から2オクターブ
ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ#
の14音構成

ソプラノマリンバ
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注:アルト、ソプラノマリンバは連弾形式で、一つの楽器を二人で演奏します。また、同じ譜面でも参加人数によって楽器を増減できます。
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つまり、竹マリンバ群だけの合奏の場合
<バス・マリンバ>1台 1名
<アルト・マリンバ>4台 8名
<ソプラノ・マリンバ>2台 4名
という編成で13人が参加することが出来ます。

マリンバセット
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<バス・マリンバ>2台 2名
<アルト・マリンバ>6台 12名
<ソプラノ・マリンバ>2台 4名
という編成で18人が参加することが出来ます。
後は、人数が増えれば暫時楽器を増やしてゆけば良いのですが、特に<アルト・マリンバ>中域は、多少増えても減っても音楽的には大差がないので、もっぱら人数の調整はこのパートです。
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<楽器の大きさ>
アトリエ用の楽器群は、会場が毎回違う場所で、楽器をその都度搬入搬出する事を条件として考えておかなければならない。運搬にはトラックを使わず、ワゴン型の普通乗用車で軽便に運搬できる事を念頭においている。勿論その会場の一角に楽器を保管する事も考えられるが、それにしてもアトリエが終わったら簡単に片付けられるという条件も重要である。楽器は大きすぎず、各楽器は基本的にひとりで持ち運び出来る大きさ、重さを超えない方が良い。だから、上に示したバス、アルト、ソプラノ各竹マリンバはひとりで運べる大きさ、重さに制限している。また作曲上、アルト、ソプラノマリンバを連弾形式にしているのは、そうする事で必用な楽器の数を減らし(人数をかせぎ)、それでいてひとりの演奏者が担当できる音域を最大限確保できるからである。
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<演奏は立った姿勢>>
竹マリンバは、立った姿勢で演奏する(立奏)ことを基本にしている。
西洋文化習慣では、床に直に座る事は少ない。家の中でも会場でも常に靴を履いている。床に座りたくても通常床は汚れていて快適ではない。だからもし床に座ってアトリエ活動をする為には、座布団やマットを用意しなくてはならない。
床に座った姿勢は悪くない。日本だけでなくアフリカやアラブ世界でも床に直接座る習慣はあるし、車座に座ったときの一体感は掛け替えがない。だから、 現在私は最も対応し易い演奏姿勢として立奏を優先しているが、床に直に座って演奏することも、楽器をテーブルの上に置き椅子に座って演奏することも臨機応変に選択すれば良いと考えている。(フランスでも、ある精神病院の施設で床が板張りで掃除が行き届いていた部屋があり、そこでは楽器を床に直接置き全員床に車座に座って演奏をした経験がある)
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スタンド
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<竹マリンバの台>
竹マリンバは、X型のスチール製キーボード・スタンド(既製品)に水平に設置している。市販のキーボード・スタンドは大人、子供の背の高さに合わせて調節できるのも便利であるし、又軽くて丈夫だから可搬性に優れている。
さて、どの様なスタンドを選択するか?
様々なメーカーが様々なタイプを販売しているが、竹マリンバは軽量なので、一番軽便なタイプのもので十分対応できる。因に7年前に購入した、RTXマークの最も単純なスタンド(確か一台3千円ぐらいだった)は、様々な会場で何十回と搬入、設置を繰り返してきたが、未だに破損していない。バスマリンバの9音タイプは重いので、少し丈夫なタイプ*7のスタンドを使っている。
<何故、ト長調音階なのか?>
しばしば受けるこの質問。なかなか簡単に一言では説明できないの困ります。ト長調音階を選択したのは、音楽理論的というよりは極めて物理的な必要性、経験に由来しています。

スタンド2
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まず、楽譜(五線譜)の先頭に#や♭がたくさん付いているのはいただけません。音楽のプロにとっても煩わしいのに、一般の人がこれを見た時にどう反応するか!、、、想像だにかたくありません。#や♭は少ない方が懸命ですから、まず考えられるのはハ長調(イ短調)。そうでなければ、#ひとつのト長調(ホ短調)あるいは♭一つのヘ長調(二短調)。
しかし、この3つの選択肢のうちでト長調を選んだ理由は、バスマリンバの持ち運びの点だと言えるでしょう。1オクターブ7音だけの小さなバスマリンバでもかなり場所をとり、長さ90cmx幅80cm、重さ約11kgです。そこでバスマリンバの最低音をヘ音記号二間目のド音を限度とすることにしたのです。これより高い音程だとバスとしての役割が希薄になりますし、これより低いと筒が長く、大きく、重くなり、持ち運びに困難が伴います。
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バスの最低音をド音に設定したのなら音階をハ長調にすれば?という事になりますが、、、。
最初にアトリエ用に作曲した曲が、第五音目を主音とするソ旋法、ミクソリディアン・モード(Mode mixoridian)で始まる「Eveil du Vent」(エヴェイユ・デュ・ヴォン:風の目覚め/1996年)という曲でした。この曲の第一テーマではト長調の鍵盤を使うと、バスの動きがレ、ドとなり、ドが最低音で大丈夫です。ところが第二部ではラ旋法、エオリアン・モード(Mode eolien:短調) に転調し 、ミ、レ、ド、シとバスが下がって行きます。そこで当初、最低音がシ音から始まるバスマリンバを使っていました。しかし、シ音は後半に一回しか出てこないのに、その為に重いシ音の竹筒(長さ90cm以上、直径11cm以上)を一本付け加えている事に疑問を感じ、シ音は一オクターブ上に展開して処理する事にし、バスマリンバはあくまでもド音を最低音と限定し、ファ音には#が付くト長調音階のディアトニック音階で全てのマリンバを統一する事に決めたのです。
もしこの Eveil du Ventという曲をハ長調の鍵盤で演奏すると、バスの動きがソ、ファとなり、これではバスマリンバが運搬には大きすぎ重すぎます。また1オクターブ上に置き換えてはバス音がもの足りません。また、シ音に♭が一つ付くヘ長調(ト長調の一音下)という手もありますが、バスの最低音がシ♭音となり、これもちょっと筒が長過ぎ運搬が容易ではありません。
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<譜面は簡素に越した事はない>
余談になりますが、日本では小学校の授業に音楽の時間がありますから、音楽が苦手な子供でも五線譜は何とか読めます。ところが、西欧音楽の本場であるフランスで、小学校に音楽の授業が無いのです!ですから一般の子供、そして彼等が成長した大人達も基本的には楽譜が読めず、コンセルヴァトワールや音楽学校に通った事があるとか、特別に音楽教育を経験した人以外は譜面が読めない。これは一寸驚きです。
中学校からは音楽の授業がありますが、テストの点が重要視されず、それに週一時間しかない音楽の授業などほとんど無関心。小学生時代に音楽教育とは無縁だった子供たちに、中学になって急にソルフェージュ(楽理)を押し付けたって嫌気がさしてしまうだけです。
方や、彼等の年代は音楽に非常に興味をもっており、ほとんどの子供のポケットやバッグの中には iPod等の携帯音楽再生機が入っていて、インターネットで流行の音楽をダウンロードして聴いていますが、残念な事にその興味の持ち方と学校の音楽の授業とは全く関連付ける事が出来ないという不幸な状況です。
そんなわけで、フランスでは小学校や中学校の子供たちからアトリエに参加してくる大人たちまで、西洋楽譜、五線譜を読むのが苦手な(読めない)人たちが大半です。ですからアトリエでは通常楽譜は使わず、口立てで指導しています。あるいは参加者の要望に応じて、パネル(黒板)に音名を書き並べて、視覚的に覚えてもらう方法も使っています。ファ、ミ、ファ、ソ、ラ、、、というように。
しかし、 時によっては楽譜を渡して指導する場合もあります。6年以上も続いている「竹の子合奏団」Pousses de Bamboo Orchestraの子供たちは楽譜が読める様になってきたので、最近はパート譜を渡して指導する様にしています。その場合にも、楽譜の冒頭に#や♭が沢山付いていてはそれだけでうんざりしてしまいますから、#が一つだけの簡素な譜面は馴染みやすいというわけです。
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<笛類との関係>
又、もう一つ別の理由をあげるとすれば、私が使っている日本の篠笛の三本調子がト長調、そしてアルトケーナのケナーチョが、レ音を最低音とするニ長調音階でト長調音階が簡単に演奏できるという事も関係しています。
何で篠笛の中で三本調子を選んだのか?、、、という事も説明しておく必要があるでしょう。
篠笛で頻繁に使われるのは、恐らくハ長調の八本調子でしょう。しかし、八本調子の篠笛はいわゆる西洋フルートの音域の一オクターブ上、つまりピッコロの音域です。ですから音が甲高くかなり耳障りです。この音域が必要な場合もありますが、豊かなメロディーを奏でるにはもう少し低い音が欲しくなります。そこで篠笛の三本調子がト長調で好都合という事なのです。三本調子の篠笛は、#一つのト長調(ホ短長)以外にハ長調(イ短調)、♭一つのヘ長調(ニ短調)、#二つのニ長調(ロ短調)の演奏までは容易です。何よりも最低音がソ音で、音色が豊かです。またこれより低い(長い)篠笛、二本調子や一本調子は、指穴が広すぎて演奏が困難になってしまいます。
また、日本の尺八と同じく最低音がレ音で、ケーナ(ト長調)より音域が四度低いケナーチョ(ニ長調)は豊かなメロディーを奏でるには最適な音域です。
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、、、と言う具合で、私が使っている笛類の選択からも、ト長調音階が使い易いという結論に至ったのでした。
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、、、つづく。
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| Makoto YABUKI |